サイバー防御側と攻撃側の間では、終わりのない戦いが繰り広げられており、セキュリティ製品も例外ではない。セキュリティベンダーが最新の脅威を軽減する方法を開発すると、攻撃者はすぐにその方法を回避する手段や、それに取って代わる新たな脅威を見つけようと動き出す。
企業や個人を詐欺師や、マルウェア、データ窃取から守る取り組みで優位に立とうと、多くのサイバーセキュリティ企業が、武器として有用な可能性のある人工知能(AI)や機械学習(ML)に目を向けている。
サイバーセキュリティの分野でAIを活用することには、いくつかの利点がある。防御策を強化し、対応時間を短縮できる一方で、完璧な解決策ではない。特に脅威の特定と軽減に関しては、AIが人間の知性に取って代わることはない。しかし、適切な状況で適切なチームと組み合わせれば、AIは役に立つ。
現在、サイバーセキュリティでAIはどのように使われているのか?
たとえSIEMソリューションが予測機能の強化を試みる場合でも、脅威インテリジェンスソフトウェアが脅威検知プロセスの自動化を試みる場合でも、世界中の企業が、将来のサイバーセキュリティにおける重要な要素としてAIに注目している。
AI全般が現在、注目を集めているが、サイバーセキュリティでの利用は今後数年で急速に拡大すると予想されている。Statistaのレポートは、「AI in Cyber Security」市場が2020年の105億ドルから2026年までに463億ドルへ成長し、その過程で、規模が2000億ドルに近づいているサイバーセキュリティ製品市場に占める割合をさらに拡大すると予測している。
AIや機械学習によって、サイバーセキュリティ企業がサイバー犯罪者との競争で優位に立てると各社が考えている例を、いくつか紹介しよう。
- 脅威をより迅速に評価:デジタルトランスフォーメーションがビジネスの世界を席巻するなか、セキュリティチームは前例のない量のデータを処理・保護するよう求められており、アラートの量は圧倒的に増えている。人工知能を使えば、アラート疲れを避けながら、このデータをふるいにかけ、潜在的な脅威をより効率的に特定できる。IBMのQRadar SIEMソリューションは、脅威検知業務で機械学習をどのように活用しているかを示す一例だ。
- 防御対策を自動化:セキュリティオーケストレーション、オートメーション、レスポンス(SOAR)ツールは、2017年に初めて登場して以来、サイバーセキュリティ戦略の中で人気を高めてきた。その理由の一つは、SOARがセキュリティ脅威に対応する際に必要な人の介入を減らし、人間の専門家がAIには難しい、より創造的な思考を要する問題に取り組む時間を生み出す可能性にある。
- ヒューマンエラーの可能性を低減:サイバーセキュリティシステムにおける重大な弱点の一つは、人間の要素だ。どれほど綿密に計画しても、どれほど効果的なテクノロジーを使っても、1人か2人がミスを犯すだけで、ネットワークがランサムウェアやその他のサイバーセキュリティ上の脅威に対して無防備な状態になり得る。合理的な範囲でソリューションを自動化することで、サイバーセキュリティ企業は、ヒューマンエラーがサイバー上の大惨事につながる可能性を減らそうとしている。
- フィッシングを検知:フィッシングは、ハッカーがネットワークに侵入するために使う最も効果的な手口の一つだ。AIをメールセキュリティツールと統合すれば、メールの文脈や内容を分析し、メールのなりすましなどの不審な挙動の兆候を検知して、ユーザーの受信トレイに届く前に悪意のある可能性があるメールをブロックできる。これは単純なフィッシング詐欺だけでなく、スピアフィッシングのような高度な手口にも有効だ。
- 生体認証:従来のパスワードによる保護に代えて、または併用して、AIを搭載した生体認証スキャナーや顔認証スキャナーを導入し、ハッカーによるユーザーアカウントへのアクセスを阻止しようとする企業もある。
- 行動分析:多くの企業が、ユーザーの異常な行動をより適切に特定し、大きな被害が生じる前に潜在的な脅威を阻止するため、UEBAやその他の行動分析ソリューションの実験を始めている。この種の分析にはさまざまな形態があり、例えば、オフィスではなく公共図書館からログインするなど、通常とは異なるユーザーのログイン行動をAIで追跡することなどが挙げられる。
サイバーセキュリティにおけるAIの役割をもっと知りたいですか? 詳しくはAIとMLによるサイバーセキュリティ:攻撃側と防御側の最新の戦場
サイバーセキュリティにおけるAIの効果は?
AIと自動化について語る際によく聞かれるのは、結局のところ、人間の知性がもたらす創造的・戦略的思考をAIは再現できないという意見だ。これまでのAIの導入・発展状況を踏まえれば、これは正しい。
AIや機械学習が得意だと実証してきたのは、単純で予測可能なパターンを持つ作業や、大規模なデータセットの処理を必要とする作業だ。そのためAIは、インシデント対応の時間を短縮できる可能性がある。人間には、自動化ほど迅速にネットワークトラフィックを処理できないからだ。
一方、AIが多数の異常または予測不能な挙動に対処しなければならないユースケースでは、AIは苦戦する。そのため、行動分析を解決策として利用する場合、その効果には一長一短がある。IEEEが2018年に発表した論文では、この点についてさらに詳しく説明し、「機械学習は、特権ユーザー、開発者、知識の豊富な内部関係者への対応に限界がある。これらのユーザーは、職務上、不規則な行動を取ることが多いため、独特の状況に置かれている。そのため、統計分析でアルゴリズムのベースラインを作成することが難しくなる」と述べている。
さらに、AIシステムの実装が不適切だと、攻撃において企業に対して武器として利用される可能性がある。これは、悪意ある攻撃者がAIアルゴリズムの学習に使われるデータセットを操作するデータレベルで起こり得る。データの偏りや欠落が脆弱性を生むこともある。ハッカーは、と呼ばれる手法を使うことがある。ニューラルファジングこれは、入力データを処理するソフトウェアのどこに弱点があるかを特定するための手法だ。
AIが自分に牙をむくのを防ぐには、保護策を講じることが重要だ。デバイスやアプリケーションの設定を定期的に評価し、人工知能ツールに直接関係しないサイバーセキュリティ基盤の他の領域も監視する必要がある。これはAIにとって有益なだけでなく、セキュリティ態勢全体にとっても有益だ。
サイバーセキュリティにおけるAIの存在感の高まりは、両刃の剣でもある。サイバーセキュリティ企業がセキュリティ強化のためにAIを活用する一方で、ハッカーもAIが生成したフィッシングメールや、常に変化するマルウェアのシグネチャーなど、ほぼ同じ手段を使える。
幸い、十分に機能するAIを構築するのは、実行できるリソースと専門知識を持つ企業にとっても難しい。そのため、平均的なサイバー犯罪者が次のソーシャルエンジニアリング攻撃にAIを使う可能性はおそらく低い。しかし、ロシアのような国の国家支援を受けたハッカーは、高度なAIハッキング能力を利用できる可能性がある。
結論:サイバーセキュリティにおけるAI
サイバーセキュリティにおけるAIの有効性は、導入される他の分野と同じだ。AIが効果的かつ安定して実行できると実証されていることに集中させれば有用だが、それ以外に使おうとすると苦戦し、しばしば大きな困難に直面する。
サイバーセキュリティ戦略にAIを導入する際の鍵は知識だ。AIの学習に与えるデータという形での知識と、AIが得意なことや、それを自社のビジネスにどう活用するのが最善かを理解するという形での知識の両方が必要になる。
結局のところ、AIはファイアウォールやIDPSと同じくツールであり、サイバーセキュリティの悩みをすべて解決できるツールは存在しない。人工知能は組織のサイバーセキュリティ戦略に役立つ可能性があるものの、それを支える人材は依然として必要だ。そうでなければ、不安定な基盤に体重を預けることになる。
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