Aisuruボットネットが実行した、記録を塗り替える毎秒29.7テラビット(Tbps)のDDoS攻撃は、ボリューム型攻撃における世界の新たな基準となり、インターネット中核インフラの脆弱性が深刻化していることを浮き彫りにした。
Cloudflareは、毎秒141億パケットに達したこの攻撃を数秒以内に緩和したと明らかにした。
2025年初頭以降、Cloudflareは「…2,867件のAisuru攻撃が緩和された」と述べた。
ボットネット主導型攻撃の進化するツールと戦術
29.7Tbpsの攻撃にはUDPカーペットボンビングという手法が使われ、パケット属性をランダム化して静的フィルタリングを回避しながら、毎秒およそ15,000個の宛先ポートを圧倒した。
こうした攻撃パターンは短時間かつ猛烈で、広範囲に分散しているため、人間のアナリストや従来型のオンデマンドなスクラビング契約では、間に合うように緩和することがほぼ不可能だ。
Aisuruの運用モデルは、この課題をさらに深刻化させている。ボットネットの一部はアンダーグラウンド市場で貸し出し可能な単位として販売されており、スキルの低い脅威アクターでも、数百ドルで十分な攻撃力を購入し、バックボーン回線を飽和させたり、大手ISPを妨害したりできる。
Aisuruに関連するマルウェアもモジュール化が進んでおり、攻撃者はパケットのシグネチャーや分散パターンを調整して、従来の検知ヒューリスティクスを回避できる。
直接の標的になっていない組織でさえ、巻き添え被害を受けている。KrebsOnSecurityが報じたように、米国のISPではAisuruのトラフィックを引き金とする広範な輻輳が観測された。攻撃の被害者ではなかったにもかかわらずであり、超大容量攻撃がインターネットのより広範なエコシステム全体に波及し得ることを示している。
今日のDDoS情勢を形作る主要トレンド
この攻撃を詳しく見ると、注目すべきいくつかの新たなパターンが浮かび上がる。
- 極端な規模が新たな基準に:複数Tbps規模の攻撃は、例外ではなく日常的なものになった。
- 自動化が手動対応を上回る:攻撃の展開から終結までがあまりにも速く、従来の手動ワークフローでは対応しきれない。
- 地政学的な引き金:抗議活動や政治的緊張が生じている地域でDDoS活動が急増し、特定の高リスク地域からの攻撃が目立って増加した。
- AIと重要産業がリスクにさらされる:生成AIプロバイダーや、鉱業、自動車などの分野が標的になりやすくなった。その背景には、世界的な貿易摩擦や地政学的対立もある。
これらのパターンは、ボットネットが地政学的な緊張点や経済の不安定化に迅速に適応する、進化するDDoS情勢を反映している。
超大容量DDoSに対するレジリエンスの構築
Aisuruのような現代のボットネットの速度と規模を踏まえ、組織は次のような自動化された多層防御を導入すべきだ。
- 常時稼働の自動DDoS緩和策を導入し、手動での有効化が必要なオンデマンドサービスに頼らない。
- 上流プロバイダーのカバレッジを確保し、ISPレベルのスクラビングなどによって、オリジンインフラに到達する前にボリューム型の洪水を吸収する。
- エニーキャストアーキテクチャを使用して、世界各地の複数のプレゼンスポイントに攻撃トラフィックを分散させる。
- レート制限、異常検知、プロトコル適用を有効化し、大量のUDPフラッドを特定して抑制する。
- ゼロトラストネットワーク制御を実装し、特に外部に公開されたAPIやバックエンドシステムを保護する。
- 定期的な攻撃シミュレーションを実施し、複数Tbpsの負荷シナリオでレジリエンスを検証する。
- 地政学的指標を監視する。大規模なDDoS急増は、政治的抗議活動や社会不安、経済紛争と重なるケースが増えているためだ。
これらの対策は、ダウンタイムを短縮し、サイバーレジリエンスの構築に役立つ。
超大容量攻撃が新たな常態に
Aisuruボットネットによる超大容量DDoS攻撃は、世界的なサイバー脅威の進化における転換点となった。こうした大規模かつ高速なフラッド攻撃が、商業規模で兵器化されている。
攻撃者がボットネットのキャパシティーを借り、地政学的な火種を突き、攻撃技術をますます高速化・高度化する中、記録的な攻撃と日常的な攻撃の境界は急速に消えつつある。
攻撃者が実行できることの範囲が急速に広がる中、次の一手はゼロトラストを導入し、大規模攻撃にシステムが直面した際(起きるかどうかではなく、いつ起きるかの問題だが)の被害範囲を抑えることだ。

