AIはソフトウェアの脆弱性を見つけるだけではなくなりつつある。Anthropicによると、同社のClaude Mythos Previewモデルは、暗号システムの背後にある数学を分析するための新たな手法に貢献した。
Anthropicによると、このモデルは耐量子計算機署名の候補であるHAWKに対する攻撃を改良し、AES-128の7ラウンド版に対する既存の攻撃手法を高速化した。いずれの発見も、現在実運用されている暗号システムや署名システムには影響しない。
差し迫ったセキュリティリスクは最小限だが、今回の実験は、最先端AIモデルが暗号研究をどのように加速し、標準規格になる前に脆弱な設計を明らかにする可能性があるのかを早期に示すものだ。
2つの暗号研究上のブレークスルー
同社によると、AnthropicのClaude Mythos Previewは、NISTの耐量子計算機暗号プロセスで評価中のデジタル署名方式、HAWKに対する攻撃を改良した。
このモデルは約60時間で研究を完了した。Anthropicによると、その結果、HAWKの推定セキュリティレベルは大幅に低下し、一部の提案パラメーターサイズでは想定より保護性能が低い可能性が示された。同社は6月、この発見をHAWKの開発者に開示し、その後、NISTのメーリングリストを通じた公開に向けて調整を行った。
Anthropicによると、ClaudeはAES-128の7ラウンド版に対する攻撃も改良し、従来の手法で必要だった推測を1つなくしたことで、攻撃を約200~800倍高速化した。
標準的なAES-128は10ラウンドを使用する。暗号研究者は、暗号が高度化する攻撃にどの程度耐えられるかを検証するため、意図的にラウンド数を減らしたバージョンを研究している。そのため今回の結果によって、実運用のAES-128で保護されたデータを攻撃者が復号できるわけではない。
実用的なエクスプロイトではなく研究
Anthropicは、いずれの結果も現在のセキュリティシステムにも変更を必要としないと強調した。同社によると、HAWKは依然として評価中で採用には至っていない。また、ラウンド数を減らしたAESは、攻撃手法が現実世界の暗号を脅かす前にその進化を理解するため、暗号研究者が意図的に研究している。
同社はまた、責任ある開示の慣行に従い、発見内容を検証するために学術専門家に相談したうえで、米国政府と研究成果を共有し、公開前に業界パートナーとも共有したと述べた。
この研究と併せてAnthropicは、ETH Zurich、Tel Aviv University、TU Berlinの研究者と共同開発したCryptanalysisBenchも発表した。これは、暗号研究の課題におけるAIシステムの性能評価を支援するものだ。
サイバーセキュリティにとっての意味
今回の成果は、最先端AIモデルがソフトウェアのバグ発見を越え、数学的な暗号研究の領域へ急速に進歩していることを浮き彫りにしている。
現在のAIモデルが、オンラインバンキングやメッセージング、インターネット通信を保護する暗号を破れるという証拠はない。しかし今回の研究は、そうしたシステムが広く導入される前に、AIが暗号設計の弱点を研究者に発見させるうえで、ますます役立つ可能性を示している。これにより、将来の暗号標準の検証が加速する可能性がある。特に各国政府は、量子コンピューターが最終的に現在の公開鍵暗号を脅かす可能性のある未来に備えている。
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