組織がAIの導入を加速させるなか、多くの組織がセキュリティ戦略の中核として生成AI(GenAI)に目を向けている。
しかし、AppOmniのAI部門ディレクターであるMelissa Ruzzi氏によると、GenAIだけに頼ると、解決する以上に多くのギャップを生み出す可能性がある。
「GenAIは非決定論的で、言語に重点を置いているため、ケースによっては最適なツールではありません」と、Ruzzi氏はeSecurityPlanetへのメールで説明した。
さらに、「数字を合計したいときに、電卓を使う代わりにサイコロを振るようなものです」と付け加えた。
Ruzzi氏の見解は、業界全体で広がりつつある認識を反映している。GenAIは強力だが、現代のサイバーセキュリティの課題に効果的に対処するために必要な、はるかに大きなAIツールキットの一部にすぎない。
セキュリティでGenAIだけでは不十分な理由
セキュリティチームは、かつてない規模と複雑さのデータに直面している。クラウド環境、SaaSプラットフォーム、エンドポイント全体で、数百万件のシグナルが生成されている。
GenAIはデータの要約や解釈に役立つ一方、決定論的なタスク、詳細な数学的分析、大量のデータの相関分析には苦戦する。
Ruzzi氏は、AIを活用したセキュリティの成功は、モデルの高度さよりも、チームが異なるアプローチをどれだけうまく組み合わせられるかにかかっていると強調した。「高度なAIアルゴリズムではなく、セキュリティ領域の知識こそが成功を左右する最大の要因です」と同氏は述べた。
これは、組織が大規模言語モデルだけでセキュリティの課題を解決できるという思い込みから脱し、従来型の機械学習、統計学、データサイエンスを含む、よりバランスの取れたアプローチを採用しなければならないことを意味する。
GenAIが生のセキュリティデータに苦戦する理由
セキュリティにおけるGenAIの主な限界の一つは、言語と確率的な出力への依存にある。コンテキストや構造を持たない生のセキュリティデータに適用すると、一般的すぎる、あるいは誤解を招く結果を生成する可能性がある。
Ruzzi氏は、精製されていない大量のデータをGenAIシステムに投入すると、効果が制限されることが多いと指摘した。クリーンで精度の高いデータと適切な領域コンテキストがなければ、AIの出力は実行可能な洞察に必要な深みを欠く。
そのため、多くの組織が戦略の見直しを始めている。GenAIを中心としたアプローチから、より統合されたAIフレームワークへと移行しているのだ。
適切な課題に適切なAIを適用する
AIから意味のある価値を引き出すには、組織は課題に応じて適切なツールを適用する必要がある。これには、次の組み合わせが含まれる。
この多層的なアプローチにより、チームは数値分析とコンテキストに基づく洞察の隔たりを埋められる。これは、単一のAI手法だけでは実現できないことだ。
Ruzzi氏はまた、セキュリティリスクは本質的にコンテキストに依存すると強調した。
重要なのは異常を検出することだけではなく、ユーザーの権限が機密データやシステム設定とどのように関係するかなど、関係性を理解することだ。
複数のAI技術を組み合わせることで、より深い相関分析と、より正確なリスク評価が可能になる。
セキュリティチームでAIを効果的に活用する方法
サイバーセキュリティでAIを業務に組み込みたい組織は、いくつかの重要分野に注力すべきだ。
モデルの複雑さよりデータ品質を優先する
AIシステムの効果は、依存するデータの質に左右される。
監査ログ、設定、APIテレメトリーを含む、クリーンで包括的なデータセットは、ますます複雑なモデルを導入するよりはるかに価値が高い。
使用するモデルにかかわらず、データ品質が低ければ、ハルシネーションや信頼性の低い出力につながる。
アラートのトリアージからナラティブな洞察へ移行する
セキュリティチームはアラートに圧倒されている。AIを使って問題を一つずつ調査するのではなく、意味のあるパターンを見つけ出し、最も重要なものに優先順位を付けるために活用すべきだ。
これにより、アナリストはノイズをかき分けるのではなく、影響の大きいリスクに集中できる。
数値分析とコンテキスト分析を橋渡しする
統計モデルだけではコンテキストが不足し、GenAIだけでは数値分析の精度に欠ける。
両者を組み合わせることで、行動、権限、データの機密性を結び付け、リスクをより包括的に理解できる。
反復的なリスク評価タスクを自動化する
AIは、相関分析を自動化し、不正な権限昇格や古い設定など、複雑なリスクを特定することで、手作業を減らせる。
これにより、チームは受け身の調査からプロアクティブな対応へと移行でき、修復にかかる時間を数週間から数分に短縮できる。
よりスマートなAIセキュリティプログラムを構築する
AIがサイバーセキュリティを変革し続けるなか、業界はより統合された実践的なアプローチへと向かっている。
最も高度なモデルを追い求めることから、複数のAI技術と強固な領域専門知識を組み合わせたシステムの構築へと、焦点が移りつつある。
この進化は、より大きな潮流も反映している。AIは現代の脅威に対応し続けるうえで不可欠になっているが、その効果は実装方法に左右される。
組織がAIを独立したソリューションとして扱うと、過剰な設計や期待を下回る成果につながるリスクがある。一方、既存のワークフローにAIを慎重に統合する組織は、最大の価値を得られる。
結局のところ、GenAIは従来の手法に取って代わるものではなく、その拡張である。
セキュリティチームが戦略を洗練させるなかで目指すべきなのは、単一のツールに依存することではなく、自動化、精度、人間の判断のバランスが取れた、一貫性のあるAI主導のアプローチを構築することだ。
Ruzzi氏の洞察が示すように、サイバーセキュリティの未来は単にAIを導入することだけではなく、ツール、データ、専門知識を適切に組み合わせ、効果的に機能させることにある。

