株式市場の急落、金利上昇、景気低迷が重なるなか、今年はベンチャーキャピタルの調達が容易ではない。サイバーセキュリティのような優先度の高い分野でさえ例外ではない。
PitchBookのデータによると、今年ここまでのベンチャーキャピタル投資額は約136億6000万ドルに達しているが、2021年の265億2000万ドルから大幅に減少している。
とはいえ、ベンチャーキャピタルの投資総額が約114億7000万ドルだった2020年と比べれば、今年もかなり好調だ。
それでも景気減速下で、ベンチャー投資は続いている。現在、VCはどこに注目しているのだろうか。最近の目立った取引をいくつか見て、そこにパターンがあるか確かめてみよう。
Cymulate
サイバーセキュリティ業界ではIT人材が特に大きな課題となっており、根強い人材不足は拡大し続けている。景気が低迷するなかでも、この傾向は変わらない。
しかしCymulateにとって、これは追い風となる傾向だ。同社は、規模を問わずあらゆる組織がセキュリティ・エクスポージャーを正確に把握できるリスク評価ソフトウェアを開発している。これにより、チームは優先事項により効率的かつ迅速に集中できる。
Cymulateのシステムは、クラウドかオンプレミスかを問わず、潜在的な脅威へのエクスポージャーを継続的に検証する。これは、攻撃対象領域の管理、継続的なレッドチーム演習、侵害・攻撃シミュレーション、高度なパープルチーム演習を可能にする、ネイティブなセキュリティ技術と分析機能によって実現されている。顧客のサイバーリスクは、利用開始から最初の3カ月以内にほぼ50%低減する。
9月初旬、Cymulateは7000万ドルのシリーズDラウンドを発表した。主導投資家はOne Peakで、Susquehanna Growth Equity、Vertex Ventures Israel、Vertex Growth、Dell Technologies Capitalも参加した。
「今日の市場環境では、資金調達に求められる実績への期待が大幅に高まっていることは、誰もが知るところです」と、CymulateのCEO、Eyal Wachsman氏は語った。「しかし、優れた製品を持ち、売上高の成長率が市場を上回っていれば、投資家は関心を持ち続けます。Cymulateは2021年に前年比100%の成長を示し、セキュリティ検証製品の市場機会は50億ドルを超えると見積もられています。既存の投資家は継続的な機会を見いだし、投資を増やすことを決めました」
Cymulateは、eSecurity Planetの「2022 Cybersecurity Product Awards」の受賞企業の1社でもある。
Theom
Navindra Yadav氏(CEO)、Supreeth Rao氏(CTO)、Ravi Sankuratri氏(COO)を含むTheomの創業者たちは、顧客が「自分のデータは本当に安全なのか」という問いに答えられるよう支援することに注力した。これは、さまざまな大規模企業のサイバーセキュリティ対応に携わってきた豊富な経験から生まれたものだ。創業者たちは、特にクラウド環境では、従来のソリューションが十分に機能しないことに気づいた。
TheomのCEOであるNavindra Yadav氏は、自社のプラットフォームを「データのボディーガード」と呼ぶ。高価値資産に関する知見を生成し、何を保護すべきか、何が公開されているかを明らかにする。Theomは、クラウド上のデータストア、データレイク、データウェアハウスを横断した可視性を提供する。
次に、Theomのプラットフォームはリスクに優先順位を付ける。これは顧客環境の外にデータを持ち出すことなく実行される。データは保存時も転送時も保護される。「Theomは、データが保存、コピー、移動される場所を問わず、データを保護します」とYadav氏は語った。
9月中旬、Theomは1640万ドルのベンチャーキャピタルを調達し、Ridge Venturesが主導した。MicrosoftのベンチャーファンドであるM12も参加した。
「VCは、クラウドの『データのボディーガード』になるという私たちのビジョンを信じ、すでに本番環境で稼働する製品を構築していたことに感銘を受けました」とYadav氏は語った。「この分野への関心に加え、クラウドデータセキュリティに対する新たなアプローチという私たち独自のビジョンもあり、このラウンドは募集額を上回る応募となりました」
Talon Cyber Security
ブラウザーは重大なセキュリティ脆弱性になり得る。「このギャップを認識した私たちは、エンタープライズ級のセキュリティ機能と、従業員が慣れ親しみ期待しているユーザー体験を兼ね備えたブラウザーを作る機会を見いだしました」と、Talon Cyber Securityの共同創業者兼CEO、Ofer Ben-Noon氏は語った。「そうすることで、従業員の場所、デバイス、OSを問わず、安全なアクセスを企業に提供し、組織が分散型の働き方を取り入れられるようにします」
Talonのブラウザーは、ChromeとEdgeで使われているものと同じChromiumをベースとしている。そのため、ユーザーは慣れ親しんだものと同じようなユーザー体験を得られる。
この戦略は早くも成果を上げている。同ブラウザーはRSAのInnovation Sandboxで優勝した。CrowdStrikeやMicrosoftとの提携に加え、大口顧客の獲得も実現している。
8月初旬、Talon Cyber Securityは1億ドルのシリーズA資金調達を発表した。主導投資家はEvolution Equity Partnersだった。そのほか、Ballistic Ventures、CrowdStrikeのFalcon Fund、Merlin Venturesも参加した。
「サイバーセキュリティのスタートアップは資金を調達できますし、実際に調達しています。ただし現時点では、投資家が投資先をより厳しく選ぶことを理解する必要があります」とBen-Noon氏は語った。「資金調達を目指す企業は、自ら設定した成長目標を達成するために、事業に安定性をもたらすのに必要な資金を調達すべきです。私の考えでは、重要なのは先を見据え、資金を提供するだけでなく、事業の成長やコミュニティーでのブランド構築も支援してくれる戦略的投資家と提携することです」
Coro
Coroを立ち上げる前、4人の創業者は別の有望なスタートアップを2社立ち上げていた。「私たちは、複雑で利用しにくいエンタープライズサービスを中堅市場に提供し、誰もが利用できるようにすることを専門としています」と、CoroのCEO兼共同創業者、Guy Moskowitz氏は語った。
この戦略は、サイバーセキュリティ分野で大きな効果を発揮している。実際、中堅市場には十分なサービスが提供されてこなかった。しかし当然ながら、顧客は手頃な価格で効果的なサイバーセキュリティソリューションを強く必要としている。
「Coroは過去3年間、前年比300%の成長を続けており、今年ここまでは前四半期比125%の成長を遂げています」とMoskowitz氏は語った。「あらゆる面で目標を上回っています」
Coroのプラットフォームはオールインワンのソリューションで、すべてのエンドポイントをカバーし、ユーザー、クラウドアプリケーション、メール、デバイス、データを保護する。さらに、このテクノロジーは高度なAIを活用し、プロセスの自動化を支援する。
数カ月前、Coroは6000万ドルのシリーズCラウンドを発表した。主導投資家はBalderton Capitalだった。
「現在、多くのベンチャーキャピタルファンドが、ポートフォリオ企業への追加投資に備えて現金を温存しているのが分かります」とMoskowitz氏は語った。「これは過去の景気後退や不況でも見られた、かなり一般的なパターンです。一方で、Coroのような突出した企業には大規模な投資が行われています。不況下でも急成長を示し、実行力を証明し、製品と市場の適合性に優れた企業です」
Bitwarden
2015年創業のBitwardenは、企業と消費者向けにパスワード管理サービスを提供するオープンソースプラットフォームを運営している。同社は1PasswordやLastPassなどの競合サービスと争っている。
Bitwardenのソフトウェアは比較的シンプルだ。ユーザーは破られにくいパスワードを簡単に作成し、安全に保存できる。クラウドとリモートワークの普及に伴い、同サービスは大きく成長している。ビジネスモデルとしては、Bitwardenは企業向けのシングルサインオン連携など、プレミアムモジュールを販売している。
オープンソースというアプローチも重要な鍵となっている。顧客はセキュリティインフラをより適切に評価でき、プロジェクトの拡張機能を構築できる柔軟性も得られる。
9月初旬、同社は1億ドルの資金調達ラウンドを発表した。主導投資家はPSGで、Battery Venturesも参加した。
Bitwardenは、私たちが選ぶベストパスワードマネージャーの1つでもある。
Axio
2016年、Scott Kannry氏とDave White氏がAxioを共同創業した。2人は、企業がサイバーセキュリティ投資について正しい意思決定を下す際の課題を認識していた。
「私たちは、組織のサイバーエクスポージャーについて共通の事実認識に立ち、事業とセキュリティのリーダーが足並みをそろえるために必要な可視性を提供する目的でAxioを立ち上げました」と、CEOを務めるKannry氏は語った。「サイバーリスクをドルとセントという共通言語で話してもらい、取り組みや投資の優先順位をより適切に決められるようにしたいのです。SolarWindsのような注目度の高い攻撃が発生した場合、セキュリティと事業のリーダーは、当社のプラットフォームを使って『この攻撃が自社に起きたら、どれほどの損失になるのか』という問いに答えます」
同社のプラットフォームはAxio360と呼ばれる。取締役会、CEO、IT管理者、監査担当者、コンプライアンス担当者など、幅広い利用者や関係者にメリットを提供する。
Axioのテクノロジーと成長の証しとして、同社は最近、2300万ドルのシリーズB投資ラウンドを発表した。主導投資家は、グローバルなサイバーセキュリティ企業ISTARIだった。そのほか、Distributed Ventures、IA Capital Group、BPの元CEOであるBob Dudley氏も出資した。
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