新たに発見され、MalTerminalと名付けられたマルウェアは、OpenAIのGPT-4を使ってリアルタイムでランサムウェアやリバースシェルを生成することで、サイバー攻撃の常識を塗り替えている。
SentinelLABSの研究者らがこの発見を公表し、実環境で確認された初のAI搭載マルウェアだとしている。
「マルウェアへのLLMの組み込みは、攻撃者の手法に質的な変化をもたらす」SentinelOneの研究者らは、同社ウェブサイトで公開した報告書の中で述べた。「実行時に悪意あるロジックやコマンドを生成できるLLM対応マルウェアは、防御側に新たな課題を突きつける」
MalTerminal、マルウェア作成の転換点に
MalTerminalの登場は、マルウェア開発の転換点を示している。
静的なペイロードを埋め込むのではなく、このツールはマルウェア生成器として動作し、オペレーターにランサムウェアかリバースシェルかを選ばせたうえで、GPT-4 APIを通じて新たなPythonコードを作成する。この革新により、実行するたびに固有のロジックが生成され得るため、シグネチャベースの検知は極めて困難になる。
概念実証から現実の脅威へ
この発見は、ESETが2025年8月に発見した学術的な概念実証ランサムウェア、PromptLockに関する先行研究に続くものだ。PromptLockがリスクを示すためにローカルモデルを使用したのに対し、MalTerminalは、攻撃者がすでに現実の環境でLLMを駆使した攻撃を試していることを示している。
MalTerminalは、疑わしいPythonスクリプト群とコンパイル済みのWindowsバイナリの中から発見された。MalTerminal.exe。
MalTerminalサンプルの内部
分析により、サンプル内部にハードコードされたAPIキーとプロンプト構造が存在し、マルウェアがOpenAIの現在は廃止されたチャット補完エンドポイントと通信できることが判明した。これは、このツールが2023年11月より前に作成されたことを示しており、既知のものとしては最古のLLM対応マルウェアサンプルとなる。
実行されると、MalTerminalはオペレーターに攻撃の種類を選択させる。次にバイナリはGPT-4へリクエストを送信し、ランサムウェアまたはリバースシェルのコードを動的に取得する。
悪意あるロジックはバイナリに保存されるのではなく実行時に取得されるため、静的解析ツールでは容易にフラグを立てられない。
調査では、関連するユーティリティとしてTestMal2.pyやtestAPI.pyも発見された。これらは主要なマルウェアの機能を模倣するほか、同じ作者が作成したとみられる実験的なスキャナー、FalconShieldも確認された。これらの成果物を合わせると、LLMの攻撃・防御両面での応用を探るために設計されたツール群のエコシステムが浮かび上がる。
サイバーセキュリティチームへの影響
MalTerminalとPromptLockは、脅威アクターが大規模言語モデルを悪意ある目的にどれほど急速に適応させ得るかを浮き彫りにしている。
ペイロードにAIを組み込むことで、攻撃者は活動を拡大し、静的な防御を回避し、従来のランサムウェアの手法を超える新たな攻撃を生み出せる。
組織はどう対応すべきか
LLM対応マルウェアはまだ初期段階にあるものの、防御側は悪意あるコードが要求に応じて作成される未来に備えるべきだ。セキュリティチームは次の対策を講じられる。
- 未承認のAPI利用や疑わしい呼び出しを監視することで、大規模言語モデルのエンドポイントへのアクセスを把握する。
- ネットワーク制御を適用し、未知の実行ファイルからの外向き接続を検知する。
- 露出したAPIキーは速やかに無効化またはローテーションし、キーの配布を厳格に管理する。
- 実行時の挙動分析をウイルス対策およびエンドポイント検知ツールに組み込む。
- ハードコードされたプロンプトや埋め込みキーなどのアーティファクトを特定できるよう、インシデント対応チームを訓練する。
より広範なレジリエンスを確保するため、組織はゼロトラストの原則を採用し、多要素認証を徹底するとともに、悪用の可能性を抑えるため、AI統合に関する厳格なガバナンスを維持すべきだ。
こうした脅威はまだ大半が実験段階にあるものの、現在のセキュリティモデルの盲点を露呈させ、防御側に対して、プロンプトの内容など新たな指標を探すよう迫っている。
AIがどのように武器化され得るかをもう一例として、ChatGPTがCAPTCHAの課題を回避するために使われる仕組みを見てほしい。





